最初についた嘘の記憶がありますか?
私は、その時の記憶を鮮明に思い出す事ができます。
小学校1年生の時でした。
我が家では、「週末にはよそのおうちへ遊びに行ってはいけない」と言うルールがありました。
勿論お呼ばれをした時などは例外でしたが、大抵のお友達の家はサラリーマン家庭でしたから、週末はお父さんが家にいて休んでいるので邪魔をしに行ってはいけない、というのがその理由でした。
私には二つ上に兄がいるのですが、私の同級生Tちゃんにもお兄さんがいました。
ある日曜日、兄と近所の空き地で遊んでいると、ふと兄が「Tちゃんの家に行ってもいいかお母さんに聞いてきて」と言うのです。
私は今日は日曜日だから、お母さんに聞いても絶対にダメっていうに決まっている、とそう思いました。
一旦は言われた通りに家の前まで戻りましたが、私もTちゃんの家に行きたい、と思った私は母親に聞かずにそのまま兄の元まで戻り,「お母さんが、行っても良いって」と兄に伝えたのです。
ひととおりTちゃんの家で遊んで家に戻ると、母は兄にどこへ行っていたのか尋ねました。
Tちゃんの家にいた事を知った母は当然兄を叱り始めました。
兄は「だって、妹(私)が良いって言ってたもん…」当然そうなります。
兄よりも一足遅れて家に帰った私は、玄関のドアの隙間から母に叱られている兄の姿をどきどきしながら見つめていました。
私は母にも、兄にも嘘をついて、しかも私の嘘のせいで咎められているのは自分ではなく兄である、と言う事実にもどきどきしました。
苦い「最初の嘘」の思い出です。
あなたも気づかずに子供に嘘をついている!?
それでは、実際「嘘」とはなんなのか考えてみましょう。
どうして嘘をついてはいけなのでしょうか。
どうして嘘がいけないのか、ともし子供に聞かれたらなんと答えますか?
正直でまっすぐな子に育ってほしいからでしょうか。
嘘は人を傷つけるからでしょうか。
人を騙す事がそもそもいけないからでしょうか。
もしかすると、あなたも知らず知らずのうちに嘘をついているかも知れません。
こんな経験はありませんか?
近所のショッピングモールの中に入っている大型スーパーにいつものように夕食の材料を買いに行きます。
もちろん、子供も一緒です。
けれどもそのモールには子供にとって魅力的なおもちゃ屋さんも入っていて、スーパーに行く途中その前を通らなければならないのです。
「おもちゃ買って~!」子供が言います。
「今日はご飯の材料を買いに来たからおもちゃはまた今度ね」
子供は買ってもらえない事を一旦は理解して、その日はそれ以上駄々はこねませんでした。
次の日。
また昨日と同じように子供の手を引いて、同じスーパーへ買い物に出かけます。
「ママ、おもちゃ買って~」
「買わないって言ったでしょ」
「ママは今度来たら買ってくれるって言ったのに!」
親からしてみれば、決して「おもちゃを買ってあげる約束」をしたつもりはありません。
けれども時系列をハッキリ理解していない子供にとって、「また今度」は次に必ずやってくる約束事と理解をしてしまいます。
その結果、この子にとっては「お母さんはおもちゃを買ってくれるといったのに嘘をついた」と言う事になってしまうのです。
子供には「確定していない未来の出来事の約束は出来る限りしないほうが良い」と言われています。
上の子供の例では、「また今度ね」は子供にとってのすぐの未来であり、必ず叶えてもらえる約束です。
同様に「今度遊園地に遊びに行こうね」などのいつ行けるのか決定していない未来の事柄も確実でない限り子供に伝えないほうが良さそうです。
子供はどうして嘘をつくの?嘘をついた時の対処法
上の例では、普段の何気ない会話も子供にとっては嘘になってしまう可能性のあるリスクについてお話しました。
それでは、どうして子供は大人に嘘をつくのでしょうか?
嘘をつくと叱られる、嘘をつくのは悪いことだ、子供だって勿論その事は理解をしているのです。
けれども何か自分の欲求に反した出来事を受け入れなければいけない理由ができ、子供の心の中ではどちらか一方の選択が出来ずに葛藤をした結果、嘘と言う形で口から出てきてしまうのでしょう。
まず、おかしな言い方ではあるのですが、嘘をつくのは子供の成長の証である事を喜びましょう。
嘘をつくだけの語彙が発達し、嘘をつくことの出来る能力が身についたのです。
また小学生くらいまでの小さな子供の嘘は、親から見たら嘘だとばればれな上、大した内容でない事も多いものです。
もしばればれの嘘だった場合には、あまり気にせずに流してしまうのが良いかと思います。
あんな馬鹿な嘘を言ってかわいらしいなあ、とでも思っていればいいのです。
もしくは、「あんた、その嘘ばればれやで?」とでも言って、思いきりツッコミを入れてあげ笑いに変えてしまいましょう。
素直な子ならば「どうして嘘だとわかったの?」と聞いてくれたりするので、そんな時にはお母さんはあなたの事だったらどんな事だってわかるのよ、あなたの嘘はお見通しです、と「嘘をついても無駄」な事を教えてあげるのも良いかも知れませんね。
その叱り方はもしかしてNG?嘘のスキルアップ
子供がさらっと嘘をついたとき、正論を振りかざして怒ってしまったという経験はないでしょうか?
「うそつきは泥棒の始まり」とも言いますから、小さな嘘をつく事がやがて癖になり、その内大事(おおごと)になってしまうかもしれないと危惧する気持ちもわかります。
親ですからそうならないように小さなうちからしっかり教育や躾をしておきたいものですよね。
けれどもいつも頭ごなしに怒鳴りつけたり、叱りつけたりする事を繰り返すとどうなってしまうでしょうか。
子供は怒られるのが怖いので、最初のうちは必死で言い訳をしているでしょう。
子供の言い訳は、嘘っぽいと思っても出来るだけ聞いてあげましょう。
そして「そう思ったんだね」と共感をしてあげる事でお互いの気持ちが落ち着いてくる事も多いものです。
いつも嘘を咎めて叱ってばかりいると、そのうちに成長と共になんと言えば怒られずに済むようになるかと知恵をめぐらせる事になってくるので、その結果、子供の嘘はどんどんスキルアップして上手になってしまいます!
親が子供の嘘の上達を逆に促しているなんて、ちょっとショックですよね。
心の葛藤が嘘を生み出す!?子供の心理
先日我が家ではこんな事がありました。
お稽古事の発表会があったのですが、練習をしても納得がいかなく失敗ばかりしている子供が、明日に控えた発表会に出ないと言い出したのです。
そのうちに床に転げまわって暴れ、泣き出しました。
しばらくそのままにして放って置いたのですが、「もう明日は出ないから、習い事も辞めるから、ママは明日は私が病気になったと先生に言ってちょうだい!」
正論を言ってしまえば、発表会の日はずっと前から決まっていたのですから、きちんと練習をして上手に出来るようにしておけばいいのです。
それに「病気になった」と先生に伝えるのは嘘です。
それが正論だと言う事は子供も分かっているのですが、「うまく出来ないから発表会に出たくない」という気持ちが強くなってしまい、心の中で葛藤が起こり、うまく気持ちをコントロールできなくなってしまっていました。
また、泣き喚いたときに母親が関心を示さずしばらく「放置」した事も気に入らなかったようでした。
子供が本当に「発表会に出たくない」のだったら別に無理強いをするつもりもありませんでした。
発表会に出たからなに、出なかったらなに、と出席する事がそれほど大きな問題だとも思いませんでした。
ただ「嘘をついて欠席すること」が正しいとも思いませんでしたので「出るか出ないかは大きな問題ではないので自分で決めたらいいと思う。けれども出ないのだったら嘘をつくのではなくて、きちんと自分の気持ちを先生に伝えて欠席したほうが良いと思う」と子供には伝えました。
「うまく出来ないので発表会に出たくないから欠席します」で別に良いと思うのです。
それを責める人がいたら責めるほうに問題があるような気がします。
結局「迷っているかも知れないけれども、あなたの選択をお母さんは受け入れるよ」と言う事を伝えたのは結果的に良かったようで、その後はまた落ち着いて練習に戻り、翌日の発表会もうまく行ったようです。
また子供はどんな状態の自分にも関心を持って対応してほしいものなのですね。
どんなにうっとおしいと思う事をしていても、内心は声を掛けて欲しいと思っているのだと言う事にも気づかされました。
まとめ
小さいときのばればれの嘘というのは、中々にかわいらしいものだと思ってしまうのですが、平気で嘘をつく大人になってしまっては困りもの。
子供の嘘は自分に関心を示して欲しい欲求の現れだったり、自分の中で処理しきれない葛藤(欲求との葛藤)が起こった時などに出てきてしまい、また怒られないようにする為の稚拙な自己防衛の手段なのではないかと思いました。
成長過程で良い信頼関係を築いていく事が一番の嘘防止策になってくるのかもしれませんね。